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製作担当が語る『シン・ゴジラ』の撮影ロケ地と都内撮影秘話!

2016年夏に公開された映画『シン・ゴジラ』。ゴジラ初上陸の地である蒲田をはじめ、大々的なロケ撮影も話題を集めた本作について、都内のロケ撮影を担当した株式会社シネバザールの片平さんを取材。同作のロケサポートに携わった東京都のロケ撮影支援窓口「東京ロケーションボックス」の遠藤さん・杉崎さんにもご同席をいただき、東宝スタジオにてお話を伺いました。

※本記事には『シン・ゴジラ』の内容に触れる箇所があります

 

地元の祭りがポイントだった!ゴジラ初上陸地点「蒲田」でのロケ撮影

— 片平さんは『シン・ゴジラ』では「製作担当」というポジションだったそうですが、実際にはどんなお仕事をされていたのですか?

片平:撮影場所を見つけ、監督にプレゼンするという役割と、見つけた場所の撮影許可を取ったり、撮影に向けての準備を進めていくのが僕の仕事でした。

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※『シン・ゴジラ』製作担当の片平さん

— 本作のゴジラ初上陸地点であり、エキストラに配られた演技心構えのテキスト(通称:蒲田文書)なども話題になった、大田区蒲田駅前でのロケ撮影について、まず聞かせていただけますか?

片平:蒲田ではゴジラから人々が逃げ惑うパニックシーンを撮りました。でも、劇中だとそれほど使われていなくて、「あんなに撮ったのに!」と思いました(笑)。撮影規模としては、最大約300名のエキストラで大々的に撮影して、一番時間もかかりました。手持ちカメラで撮影したものが、特報(※)ではたくさん使われていましたね。

※映画の宣伝素材の一つ。撮影開始前もしくは撮影中など、本編の撮影素材がまだ存在していない段階で作られる。

YouTubeの「『シン・ゴジラ』特報」の動画を見る

遠藤:撮影当日は、蒲田駅前の大通りを長時間封鎖しましたね?

片平:4時間程度封鎖しました。日曜日の8時から12時だったと思います。

遠藤:蒲田駅前はバスの発着場もあって、平日なら通勤通学者で人通りも多く、そう簡単に撮影が成立するところじゃないんです。そこでまず片平さんは、地元の商店会へ撮影の説明に行ったんですよね。地元の人たちの協力を得られるという確約をとって、それでどうやら撮影ができそうだと分かった上で、次に、蒲田の通りを封鎖して開催されるお祭りがあることを調べたんですよね?

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※東京ロケーションボックスの遠藤さん

片平:はい、例年蒲田の同じエリアでお祭りをやっていて、警察も封鎖の経験がある場所です。撮影に対しては、商店会の後押しもあって、警察からはプロダクション側で現場を仕切って安全面もきちんとケアするなど、いくつかの条件をクリアするという約束で、ロケ撮影のOKが出ました。どこかひとつのバス会社でも「うちはやらない」となったら成立しなかったなと思います。そういう意味では、地域の方々から多くのご協力をいただきました。

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遠藤:いま、蒲田の商店街に「ゴジラvs大田区・大田区商店街連合会」ってポスターが飾ってあって、映画と街がコラボしてましたよ。

— 映画公開後は地域の活性化や観光振興に、ゴジラが一役買っているわけですね。

遠藤:当初から撮影に対するハードルが低かったというのはあったんですよね。

片平:そうですね。他の作品と比べてもコンテンツとしてゴジラの知名度は抜群で、いちいち説明する必要がなかったです。まず「ゴジラを撮りたいんです」と伝えて、それから「ゴジラから逃げている人を撮りたい」と説明したら、皆さん「そりゃそうだよね」と(笑)。ネームバリューの強さはもちろんありました。

杉崎:ゴジラの知名度はもちろんですけど、片平さんの事前準備がきっちりしていました。それがあったからこそ、関係各所の理解が得られたのではないかと思います。

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※東京ロケーションボックスの杉崎さん

片平:庵野監督も樋口監督もリアリティを徹底的に追求している方で、監督たちは僕たち製作部スタッフが合流する前から、自分たちの足で歩いてロケーションを探して、その上で台本を書いているわけです。だから、台本に「蒲田に上陸する」と書いてあったら、これは実際に蒲田で撮影しないわけにはいかないという使命感がありました。

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初代ゴジラへのオマージュ。品川のロケ地に隠されていた意味

 

— 蒲田以外では他にどんな場所でロケをおこなったんですか?

片平:他には、たとえば北品川です。品川区の八ツ山橋周辺は、本作でゴジラが初めて起き上がって吠える場所なんですが、実はあの場所はシリーズ第1作目の『ゴジラ』(1954)のゴジラ、つまり初代ゴジラが初上陸した地点なんです。

— オマージュだったんですね!

片平:そうなんです。だから、見る人が見れば「ここか!」と分かる。品川にある神社のシーンもオマージュのひとつです。神社の階段を上がって逃げてきた人々がゴジラを見ているシーンも第1作目のオマージュで、今作でも同じようなアングル・シチュエーションで撮っているんですよ。

杉崎:港区の都営浅草線・泉岳寺駅を見学・取材したいと問い合わせをいただきましたよね。

片平:それもまたリアリティを追求するためです(笑)。実際に撮影した場所は、他の鉄道会社の別の駅なんですけど、そこを泉岳寺駅に見立てるために、実際の泉岳寺駅がどうなっているのかを取材させてもらいました。広告看板の位置やサイズ、それからどんなデザインのものが貼ってあるのか、実際に泉岳寺駅で調べて、美術さんが同じ看板を作ったんです。でも、そこまで果たして画面に映るのか(笑)。劇中では本当に一瞬だったりするんですけど、でも今回はそういったディテールまで、すごくこだわっていましたね。

— その泉岳寺駅の取材も含めて、今回は東京ロケーションボックスのサポートも多かったのですか?

片平:泉岳寺駅もさっきの蒲田もそうですし、東京都の管轄下の場所の交渉には、ほとんど東京ロケーションボックスのスタッフさんが一緒に来てくださいました。僕ひとりが、製作プロダクションの人間として交渉へ行くよりも、東京都が後押しをしてくれているという事実があるのとないのとでは違うんですね。

遠藤:各自治体、行政の窓口に対しては僕らも同伴しました。東京都のバックアップがあることも示しながら、ロケ撮影の了承を得るひとつの材料になればよいなと。

片平:東京都下水道局の施設もそうですね。実際の絵には映らないけど、カメラをここに置いて撮影がしたいということで。そんな交渉の時でも心強かったですし、助かりました。

遠藤:都内のある区長さんのところには、クランクイン前に東宝のプロデューサーさんに表敬訪問してもらうというイベントを組んで、実施したこともありましたね。

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都内フィルムコミッションの協力も!ゴジラだからこそ入れた場所もあった

 

—お話を伺っていると、かなり想定通りにゴジラのルートを撮影できたように感じます。

片平:蒲田は蒲田、品川は品川、各要所要所で人々がゴジラから逃げるシーンは、本当にリアルに撮れたと思います。呑川も実際の呑川で撮れました。永田町などの都心部に行くとどうしても難しくなるので、一部は宇都宮や他の場所で撮影をしましたが、ほぼ思い描いた通りだったと思います。

—都心部というと、東京都庁での撮影もあったとか?

遠藤:東京都庁は会議のシーンですかね。

片平:そうですね、東京都で災害があった際に使われるオペレーションルームのような場所ですね。ここは普段は入れないところで、ゴジラ作品だからこそできたところですね。

— 東京国際フォーラムもそのひとつですか?

片平:はい、東京駅付近の線路沿いにいるゴジラのシーンを撮りたくて、そのために、線路の横にある東京国際フォーラムの屋上から撮影をしたかったんです。

遠藤:樋口監督がこだわってどうしても撮りたいと。屋上は危険だし、できれば上がらせたくないということだったんですが、私たち東京ロケーションボックスも一緒に交渉へ行って、今回は特例ということで許可をいただくことができました。3〜4名の撮影スタッフがみんなヘルメットをかぶって、腰に命綱のロープをつけて撮っていましたね。

杉崎:立川市でもそういう普段は入れないような場所での撮影がありましたよね?

片平:立川市内の内閣府の防災基地ですね。

— それは現実にある施設ですか?

片平:実在します。本物の施設としての役割もそうですし、劇中でもリアルに防災基地として使っています。そこは内閣府さんの協力がありました。

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杉崎:立川市と立川フィルムコミッションの協力もありましたね。

片平:その防災基地の斜め向かいに立川市役所があって、そこで協力してもらいました。それから、多摩都市モノレールのところで会話シーンがあるんですが、多摩都市モノレールさんは立川フィルムコミッションさんから紹介していただきました。今回はそういった防災基地とか、入れないところに入って撮影ができました。

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杉崎:珍しい場所での撮影経験が多かったですね。それは「ゴジラだからこそ」ということと、製作部の方たちの作品づくりに対する熱量が高かったからではないかと思います。

遠藤:撮影前の段階から、東宝さんは『シン・ゴジラ』で「現代の日本や東京におけるゴジラ」というリアリズムをやる、そんなテーマを立てていたと思うんです。だからこそ、行政の施設や普段入れないところでの撮影を実現できたのだと思います。あとは、片平さんたち現場の製作部の仕切りで(笑)。

杉崎:『シン・ゴジラ』の製作担当さんは、準備も勉強もきちんとされていました。ゴジラに対する日本国民の理解のベースが高かったこともありますが、その上で熱意を伝えるのがすごくうまかった。

片平:今回ゴジラが歩んだルートで撮影した場所に関していえば、地域の方々の協力がないと撮れなかったところも多々ありました。ロケ撮影の許可をいただいた施設はもちろん、ゴジラから避難する人々のシーンに関わるところは、大人数のエキストラさんが地域から参加してくださっていますし、冒頭でお話した蒲田と同じことにそれぞれの地域で取り組んでいるというか、何よりまず地域の方々の理解を得られなければ、どの撮影もおそらく成立していなかったと思います。

— とても興味深いお話をありがとうございました!最後に、片平さんご自身は『シン・ゴジラ』のような怪獣や特撮映画のご経験はあったんですか?

片平:実は初めてだったんです(笑)。どうしようかなと、本当にできるかなという不安はありました。でも、今回のゴジラはフルCGですし、昔の特撮の方々の技術も活かしてはいますが、全編スタジオにこもってゴジラの着ぐるみで撮るスタイルとは違います。本作は「シン」とタイトルに付いている通り、スタッフも世代交代というかリニューアルして新たに出発した感があるのではないですかね。僕はそう思っています。

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— 片平さん、遠藤さん、杉崎さん、お忙しい中ありがとうございました!

都内ロケ支援窓口

東京ロケーションボックス
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