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これからのロケ地支援の可能性とは!?東京都のロケ撮影支援窓口「東京ロケーションボックス」に訪問取材

カチンコを模した東京ロケーションボックス エントランスのネームボード
聖地巡礼やロケツーリズムが注目され、ロケ地がもつ可能性が広がりをみせる現在。現場では、どのような支援が行われ、また、今後どのようなサポートが重要になるのか?今回、観光・産業・地域振興を念頭に、映画・TVドラマ等のロケ撮影をサポートする東京都のロケ撮影支援窓口「東京ロケーションボックス」を取材するため、窓口のある(公財)東京観光財団を訪問。担当者の遠藤さんと杉崎さんにお話を伺いました。
東京ロケーションボックスの遠藤さん(写真右)と杉崎さん(写真左) 東京ロケーションボックスの遠藤さん(写真右)と杉崎さん(写真左)

映像制作側にも、ロケ地提供者側にも恩恵を長期的に続けられる関係づくりが大切

そもそも「東京ロケーションボックス」はどのようなきっかけで始まったのでしょうか。 遠藤:「東京ロケーションボックス」が立ち上げられたのは2001年です。都にロケ撮影のための窓口をつくるところから始まりました。そもそもフィルム・コミッション設置の動きが日本で始まったのは、一説によると映画『ブラック・レイン』(※)がきっかけだと言われています。『ブラック・レイン』の撮影が大阪で行われた際に、ロケ撮影についての手続きがものすごく煩雑で困ったらしいんです。そうした背景もあって、東京都にロケ撮影を管理する部署が設けられました。 ※1989年のアメリカ映画。大阪の街を舞台に日米の刑事が力を合わせ犯罪に立ち向かう奮闘を描いた作品 普段は映像制作者の方から「こういう場所が欲しい」という要望が来るんですか? 遠藤:そうですね、日々電話やメールで問い合わせがあります。2015年上映・放送の作品だと、代表的なところでいうと、『ある日、アヒルバス』『まれ』『ラブ&ピース』『図書館戦争 THE LAST MISSION』などのサポートを行いました。ちなみに、「東京ロケーションボックス」のWEBサイト(http://www.locationbox.metro.tokyo.jp/)では、現在約850件(2015年10月末時点)の施設を紹介しています。 取材に答える遠藤さん ロケ地となる施設はどのように集めているのでしょうか? 遠藤:「ご希望の方は自由にどうぞ」というカタチで登録をオープンにしているので、大体週に5〜10件ずつ自然と増えている状況です。 結構多いんですね! 遠藤:ただその反面、施設が閉店や移転してしまっていたりすることも多い。そのサイクルが東京はものすごく早いですね。なので、3歩進んで1歩下がるくらいのペースで増えている感じです。登録を削除する場合は、施設側からご連絡いただけることもありますが、こちらでも定期的にチェックしています。いざという時に連絡がつかないという状況はよくありませんからね。 民間のコーディネーターと「東京ロケーションボックス」の違うところは、どんなところでしょうか? 遠藤:やはり公共施設の手配です。「東京ロケーションボックス」が申請をして制作のサポートをするという信用があれば、都が管轄する施設もほぼ受けてもらえます。我々は撮影現場に行って、トラブルが起きた際の責任も持ちますということで。映像制作側の方にも、リピーターが増えていますね。 「東京ロケーションボックス」だからこその安心感があるんですね。 遠藤:民間プロダクションのコーディネーターさんは、制作スタッフのひとりとして現場にいる。でも私たちをはじめ、各地域のフィルム・コミッションや市区町村の観光課の職員は、地域・観光振興を念頭に置いて活動していますから、映像制作のサポートはもちろんですが、地域を守るという視点も大事にしています。 例えば、とあるロケ撮影が明け方に終わって、スタッフの皆さんが「クランクアップでーす!」って拍手するんですけど、住宅街だから控えて欲しいなという思いもあるし、でもお祝いだしなっていう思いもある。 取材に答える遠藤さん 映像制作のプロデューサーとして活躍されていた経歴を持つ遠藤さんとしては、悩ましい場面ですね。 遠藤:ですから、持続可能な関係づくりというか、今後につながるロケをしていく必要があると思うんです。映像制作者側は撮りたいシーンを撮れて、ロケを受け入れる側にもきちんと恩恵がなくてはいけない。ロケ隊が撮影の合間に現地で食事をすることで経済効果が生まれたり、作品が放送されることでロケ地巡りの観光が賑わったり、それから現地の人にエキストラで出演してもらって非日常を体験してもらったり。お互いがwin-winの関係でやっていかないと、「もう今後はロケを受け入れません」というケースも増えかねませんから。 杉崎:両者の間を、いいカタチでつなぐためにフィルム・コミッションがあると思うんです。私たちは、制作の方が施設の使用条件を逸脱することをした時はきちんと指摘しますし、受け入れる側の方にも「今こういうシーンを撮るためにこうしているんですよ」と説明しています。

数字にできない価値もつくるロケ地がもつ可能性を引き出すために

都内の各フィルム・コミッションや市区町村との連携について教えてください。 遠藤:いつでも連絡をとれる情報網はできています。ただ、スタンスや取り組み方については、それぞれです。例えば、「台東区フィルム・コミッション」さん。台東区は芸能の街として文化が根付いていますし、したまちコメディ映画祭もあったりして、フィルム・コミッションの取り組みに力を入れています。 八王子市役所本庁舎、目黒区総合庁舎、葛飾区総合庁舎、狛江市役所のロケ地説明がびっしりと書かれたボードが並んでいる。 数年前にNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、ロケ地での地域活性が盛り上がったことを受けて、フィルム・コミッションに可能性を感じた方も多かったのではないですか。 遠藤:それはありますね。ただ、そんな中で私たちも含めて、課題のひとつとしてあるのが「数字」です。私たちの活動は、成果を数値化しづらいんですね。例えば、数値化する項目として“年間でサポートした作品数”なども考えられますが、それも違うんじゃないかと。いま模索しているところです。 確かに数値化が難しい活動だと思います。遠藤さんは、ロケ地撮影のサポートをした成果をどのような時に感じるのでしょうか。 遠藤:小さなエピソードですが、昨年に日中友好を目的とする団体さんから、ある依頼があったんです。中国から映像を学んでいる学生さんが来ることになって、都内の撮影ロケ地を案内してあげられないかと。そこで、私たちから「台東区フィルム・コミッション」に相談したんですよ。そうしたら、彼らが浅草を中心にガイドしてくれて。北野武監督が下積み時代に通ったお店の親父さんに登場してもらったりもしたそうで、学生さんたちもとても喜んでくれたんです。中国で『菊次郎の夏』を観ていたらしくて。 それは素晴らしいですね! 遠藤:それでつい最近、その学生さんたちの感想レポートとお礼が台東区に届いたんですよ。「台東区フィルム・コミッション」の方たちも「中国に友人が出来ました」とすごく喜んでいました。本当に小さなエピソードですけれども、こういう成果もあるんだなと。 取材に答える遠藤さん 素晴らしい成果だと思います。その学生さんたちが、将来映画制作に携わってくれたらいいですね。 遠藤:本当にそうですね。また日本に来て作品をつくってもらえたらいいですし、そうじゃなくても、映画やロケ地を通して日本に親しみを持ってくれて、交流を実現できたのがとても嬉しい。 とても素敵なことだと思います。たしかに、そういう成果は数値化ができないですね。今後新たに展開予定の取り組みなどはありますか? 遠藤:例えばですが、映像制作側にこちらから情報を発信する施策を考えています。「こういうロケ地がありますよ」という情報を発信できればと考えています。 実は昨年、都内のフィルム・コミッションに対してアンケートを取ったんですよ。そこで色々な課題が浮かび上がって、それに対してアクションを起こしていかないといけないなという気がしているんです。極端な話をすると、東京都の各フィルム・コミッションも市区町村も、ひとつにまとまって連携することで可能性がグッと広がると思うんです。 ロケ地に関する情報が掲載されたパンフレットが並べられている。 杉崎:年に数回交流会があるので、そこでお互いの情報交換はできるんですけど、まとまることができれば、もっと大きなことができるんじゃないかっていう野望ですね(笑) どうやって取りまとめていくかについての方法を模索中なんです。 取材に答える杉崎さん 遠藤:具体的な方法については、もっと詰めて考える必要がありますが、私たちも東京のロケ地専門部隊として、舵取り役を目指しているところはあります。 それと個人的には、もっと多くの人に邦画を観てほしいなと(笑) もちろん海外作品もいいんですが、僕も元々映画をやっていた人間なので。ぜひやりたいと思っています。 取材後の撮影、遠藤さんと杉崎さんが笑顔で並ぶ。 遠藤さん、杉崎さん、お忙しい中どうもありがとうございました! 東京都のロケ撮影支援窓口「東京ロケーションボックス(公益財団法人 東京観光財団2F)http://www.locationbox.metro.tokyo.jp/
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